【商業用不動産】住宅仲介とは何が違う?テナント仲介の仕事を完全解説

こんにちは。RE/MAX COMPASSオフィスオーナーの向井瑛一郎です。


不動産キャンプの白井さんとの対談、第2弾です。第1弾では私の経歴や不動産エージェントという働き方、RE/MAX COMPASSのことをお話ししました。今回はもう一歩踏み込んで、商業不動産(テナント仲介)の仕事を「1から10」まで丸ごと解説する内容にしています。


商業不動産のエージェントの仕事は、まだあまり知られていないと思います。私自身もオーナーとして、そして現役のエージェントとしても案件を動かしているので、その全体像をこのブログにまとめました。動画とあわせてご覧ください。




① 集客|物件を探す人か、貸したい人か


仕事の始まりはやはり集客です。正直に言うと、私自身は集客に大きなコストはかけていません。ご紹介やホームページからのお問い合わせが多く、ありがたいことに紹介と問い合わせで回っている状態がベースになっています。


ただ、エージェントを始めたばかりの方が最初からそうなるわけではありません。集客には大きく2つの方向があります。



  • 客付け:物件を探している出店者を探す

  • 元付け:テナントを入れたい貸主・物件を探す


客付けなら、Googleで「物件募集」と調べればいくらでも募集サイトが出てきます。店舗開発の担当者も大勢いるので、まずは問い合わせて挨拶し、要件をヒアリングして物件を提案していく。元付けなら、テナント募集の物件情報を集めたり、街なかの「テナント募集」の看板から飛び込みで当たっていく、という動き方になります。


住宅では「売主=1000人取ってこい」と言われるほど元付け(売却)集客に力を入れますが、商業では1000棟取れる物件はそう多くありません。大手デベロッパーの大型案件をまるごと取れることはまずなく、小規模な街の物件なら取れる可能性もある、という世界です。とはいえ、片手より両手のほうがいいのは住宅と同じ。「他で決められてしまった」というのは商業でも当然あるので、元付けを押さえる価値は変わりません。


最初のうちは、まず1件でも問い合わせてご挨拶し、関係をつくるところから。動いた数だけ情報も人脈も増えていきます。私自身、紹介で回るようになるまでには、地道に足を動かしてきた時間がありました。




② ヒアリング|事業と出店戦略を深掘りする


集客の次はヒアリングです。ここが本当に大事だと考えています。


どんな事業をされていて、どんなお店を、どんな場所に出したいのか。その収益構造はどうなっているのか。「なぜここに出したいのか」まで深掘りしていきます。


会社のフェーズやブランドによって、出店戦略は変わります。たとえば飲食店で「新宿に1店舗しかない」という段階なら、次は通行客数の多い場所を狙うのか、という話になる。新宿は1日350万人以上が行き交うと言われますが、では次は渋谷か、池袋か――と、集客力を軸に提案を組み立てていきます。


出店要件として「通行客数◯万人以上でスクリーニングしている」といった基準を持つ会社もあります。どこまで事業規模を広げたいのか、その会社が今どのフェーズにいるのか。そうした背景まで聞き取ったうえで提案するからこそ、的を射た物件を出せます。出店計画は店舗側だけが立てるものではなく、私たち不動産側も一緒に提案するもの。ここに商業エージェントの専門性が出ます。


裏を返せば、ヒアリングが浅いと提案もずれます。物件を並べるだけの仲介ではなく、相手の事業を理解したうえで「だからこの場所」と言える。これが信頼につながり、紹介が生まれる好循環の出発点になります。




③ 物件の用意|“表に出ない”物件があるのが商業の特徴


ヒアリングの次は、提案する物件の準備です。ポータルサイトから条件に合う物件をピックアップして提案するのが第一歩。


ただ、商業不動産には住宅と違う面白い特徴があります。それは表に出ない物件が多いこと。住宅は「住みたい」と思えばポータルにずらっと出ますが、商業は「募集していることを知られたくない」「戦略的にリーシングしたい」という意図から、あえて流通させないケースが少なくありません。


貸主側を私も経験しましたが、ポータルに出すと問い合わせが殺到します。だからこそ戦略的に動く。一般媒介で自社付けしたいという貸主もいます。つまり、物件を持っている貸主との信頼関係や、自分の足で見つけてくる力が、商業では非常に重要になるのです。




④ 案内(内見)|設備スペックの調査が欠かせない


物件が用意できたら案内・内見です。ここで商業ならではの注意点があります。


物販店(アパレルなど)は水もガスもあまり使いませんが、飲食店、たとえば中華料理屋さんなら、ガスをバンバン使い、煙を排気し、水も大量に流します。その設備容量が足りているか(スペック)を事前に調査しておく必要があります。分からなければ調べる、聞く、専門業者を連れていく、という対応をします。


「規模の大きいビルの案内は時間がかかるのでは」とよく聞かれますが、区画を見るだけなら早ければ30分弱、ショッピングセンターでバックヤードまで見ても1時間ほどです。たまに内装業者を連れてがっちり見たい方で3時間というケースもありますが、稀ですね。


出店側が見ているのは室内だけではありません。店前通行量、周辺店舗の売上、商圏人口、客層(オフィスワーカーかファミリーか、年齢層は)――こうした数字から「この場所で売上が見込めるか」を判断していきます。マンションのように見る場所が決まっていれば動線はシンプルですが、大型施設になると区画だけでなく周辺環境やそこまでの動線まで見るので、より時間がかかることもあります。


ここは住宅の方があまり触れない領域だと思います。「内装より立地」「感覚より数字」で意思決定が進むのが商業。だからこそ、根拠を持って場所を語れるエージェントが強いのです。




⑤ 申し込み・審査|“払い続けられるか”をシビアに見る


案内して決まれば、申し込み・審査です。


路面店なら家賃保証会社の審査が最も多いパターン。大型の商業施設なら、与信のために決算書や会社概要、業態資料を提出し、場合によっては帝国データバンクや東京商工リサーチの調査レポートでジャッジします。


商業施設は売上金預かりタイプが多く、毎日施設内の入金機に売上を入れてもらう形が一般的。売上そのものは把握できますが、見るのは家賃を払い続けられるか、事業として成り立つか。入ったはいいがすぐ潰れる、ということもあるので、ここはシビアに見ます。住宅のように「家賃保証会社が通ればOK」で終わらない、与信の奥行きがあるのが商業の特徴です。




⑥ 重説・契約|特約は多いが、慣れれば問題ない


審査が通れば重要事項説明と契約です。路面店は居住用とほぼ同じ流れ。商業施設も同様に調べて進めますが、特約事項がとにかく多いのが特徴です。とはいえ、慣れてしまえば問題ありません。基本の構造は住宅と似ています。


仲介手数料をいただくタイミングも住宅と近く、契約締結の前日までというのが多いです。




⑦ 引き渡し~工事|“先”が長いのが商業


契約後、引き渡しまでの期間は物件によって大きく違います。最短2週間ということもあれば、1年後、1年半後、長いと2年後ということも。


なぜそんなに長いのか。住宅は解約予告(2〜3ヶ月前)が出て初めて動き出しますが、商業は戦略的にテナントを入れ替える世界。「1年半後だけど前倒しで動こう」と、定期借家を前提に前々から動くため、リードタイムが長くなるのです。住宅のように「毎月入金はあるけど、いつ退去するか分からない」というのとは対照的です。


引き渡しと同時に工事スタート。商業施設では貸主側に図面を提出し、承認を得てから着工する流れが一般的です。




⑧ どこまで関わる?|私は工事まで一緒に動く


エージェントの仕事は決済で終わるのか、その先まで動くのか。私の場合は一緒に動くケースが多いです。


路面店で「工事業者は自分で探す」という方なら引き渡して終わり、ということもありますが、商業施設は工事の調整がある程度必要なので、区画の内見に工事業者さんを連れていくなど、かなりの調整が発生します。


お問い合わせから実際に出店するまでの期間は、短くて3ヶ月、長いと2年。ちょうど今動いている案件にも来年末の引き渡しのものがありますが、商業ではそれが「普通」なんです。




仲介手数料と、商業不動産の面白さ


テナント仲介は単価が高いイメージを持たれます。実際、居住用と比べれば高いことが多い。年間賃料の案件で200万円、小さな案件で30万円、物件によっては賃料7,000万円というものまであります。銀座・新宿・渋谷など都心の一等立地では、そうした規模の物件も実在します。月7,000万円を払う企業の担当者と向き合うわけですから、知識も度胸も必要に感じるかもしれません。でも、会社員時代にやっていたことと本質は変わりません。看板があるかないかの違いだけで、やることは同じ。最初は緊張しても、場数を踏めば自然と対応できるようになります。


最後に、商業不動産の面白さを。それは結果が目に見えること。何もなかった空き区画にテナントが入り、繁盛してお客さんが集まり、テレビの取材が来る。貸主も嬉しい、出店者も儲かって嬉しい、街もにぎわう。関わる全員にとって良いビジネスだと思っています。社会的な意義も感じられる、本当に楽しい仕事です。




これから挑戦する方へ


宅建を取ったものの、どの道に進もうか決めかねている方は多いと思います。商業不動産は目に見えて楽しい世界です。住宅しか経験のない方も、未経験の方も、ハードルはありますがぜひチャレンジしてみてほしいジャンルのひとつ。選択肢の一つとして、商業不動産にも注目していただけると嬉しいです。


第2弾も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。ご興味のある方は、RE/MAX COMPASSまでお気軽にお問い合わせください。


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