「釘一本、コンクリートの硬さまで」=分譲経験から学んだ、売るための徹底研究=
◆仲介と分譲、二つの立場で見えたこと
不動産業界で30年近く働く中で、私は仲介の立場だけでなく、分譲・デベロッパーの立場も経験してきました。
この二つの立場を経験して初めて気づいたことがあります。
それは、「物件を売る」という行為の意味が、立場によってまったく異なるということです。
仲介の営業は、極端に言えば、買主の希望に合う物件を紹介さえできれば成約に至ります。
エリア、広さ、価格帯・・・条件に合う物件が他にあれば、そちらを紹介しても仕事は成立します。選択肢は無数にあります。
しかし、分譲の立場はそうはいきません。
売れるのは、目の前にあるその物件だけです。他に代わりはありません。
だからこそ、「なぜこの物件を選ぶべきなのか」を、誰よりも深く語れなければならないのです。
◆戸建てなら釘一本、マンションならコンクリートの硬さまで
デベロッパー時代、自社分譲を手がけた際、私は商品企画から販売戦略、営業マニュアルの作成までを一貫して担当しました。
この経験で徹底したのは、「その物件を誰よりも知る」ことでした。
戸建てであれば、使われている釘一本の種類まで。
マンションであれば、コンクリートの調合や硬度まで。
表面的な間取りや設備仕様の説明だけでは、他の物件との違いを語ることはできません。
細部にまで踏み込んで理解して初めて、「なぜこの物件でなければならないのか」を、自分の言葉で語れるようになります。
この研究の積み重ねが、期別分譲計画や広告戦略にも直結しました。
表面的なキャッチコピーではなく、物件そのものの価値を裏付ける根拠があったからこそ、販売現場での説得力が生まれたのだと感じています。
◆物元(売主側)の仕事は、この姿勢が問われる
この経験は、今の仲介の仕事、特に売主側(物元)の立場に立つときにこそ活きています。
買主の御用聞きであれば、条件に合う物件を探して紹介すれば済みます。
しかし、売主から物件を託される立場では、その物件の価値を誰よりも深く理解し、言語化し、伝えきる責任があります。
立地、構造、これまでの管理履歴、周辺環境との関係性。
表面的な情報だけでなく、その物件だけが持つ強みを掘り起こす作業が欠かせません。
◆私たちが大切にしていること
私たちは、不動産鑑定事務所が母体となって仲介サービスを提供しています。
価格の妥当性を鑑定士の視点で検証できることに加え、分譲・デベロッパーとして培った「物件を徹底的に研究し尽くす」という姿勢も、私たちの強みの一つです。
「とりあえず売りに出す」のではなく、その物件が持つ本当の価値を掘り起こし、伝えきること。
それが、私たちが売却のご相談をお受けする際に大切にしているスタンスです。
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