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〔コラム〕~戦争と不動産【後編】

前回の戦争と不動産(前編)では、戦争が不動産市場にどのような影響を与えるかということで「戦時下では現物が強い」「不動産はインフレに強い」「有事の日本買い」の三点から「海外資本が流入する市場において不動産は買い」と結論づけました。

戦争と不動産に関しては、もう一つ伝えたいことがあります。それは倫理観の大切さです。

倫理観とは「倫理(人として守るべき善悪や是非の判断や判断基準)についての捉え方・考え方」を意味する言葉(Weblio辞書より引用)。

戦争で街を破壊し、人と人が傷つけ合う、殺し合う。これは、絶対あってはいけない非人道的なことです。倫理的に許されるものではありません。逆に言えば、戦時下では倫理観が薄れ、さまざまな場所で平時には信じられないようなことが起きます。

それは不動産業界においても同じです。

第二次世界大戦後、都市部の至る所が焼け野原となった日本では、家屋だけでなく登記簿等も焼けてしまい、どこが境界かどの土地が誰のものかわからなくなってしまいました
自らの土地を守るため周囲の廃材等を集めバラックなどを建てる人がいた一方、その混乱に乗じて他人の土地を不法占拠し、そこに居座ったものも多くいました。中には元の所有者が現れずに自分のものにしてしまったり、現れても居残り続けたりしたものもおり、借地等の話も含め不動産における秩序が著しく混乱し、それらが解決するにはとても長い年月が必要でした。平成バブル時代ぐらいまではその時の様子を残すエリアも都心部には点在していました。

戦後のどさくさ、住むところはおろか腹を満たすこともままならない人が多くいたという状況での出来事を、今この時代から「不法占拠は犯罪行為」だなどというつもりは毛頭ありませんが、(少なくともこの原稿を書いている時点での日本において)平時であるこんな時代だからこそ倫理観を大切にしたい、大切にしなければならないと切に思います。

アメリカの不動産取引では倫理規定が大変重視されています。
この倫理規定は国から押し付けられたものではなく民間団体である全米リアルター協会(NAR:National Association of Realtors)によって業界関係者が自ら定めたものです。
第一次世界大戦後のアメリカでは土地売買に際し二重売買等の詐欺が横行していたといいます。倫理観に悖(もと)るブローカーが跋扈(ばっこ)し、不動産業界の信用は失墜していました。

そこから100年にも及ぶ倫理的行動の積み重ねで、今やアメリカの不動産流通はとても公明正大なマーケットです。不動産事業者以外の一般の人にも不動産情報が広く公開されていること、関係者が顧客に告げずに「紹介料」等の利益を得ないこと、顧客の利益を最優先するエージェント制度。様々な施策の積み重ね、そして倫理規定の徹底で、安心できるマーケットとなっています。

一方、日本ではどうでしょうか。
倫理感あふれる企業も多く、、、、と言いたいところですが全くそのようなことはありません。
住友不動産での社内処分の連発、レオパレスの施工不良、大東建託の地主とのトラブル。
「中小企業は信頼できない、やはり大手企業が安心」とばかりに大手企業を盲信する人もいますが、実のところ大手企業による事件が後を絶ちません。
もちろん素晴らしい大手会社も多くあります。中小企業然り。これは大手や中小という規模の話ではなく、倫理観があるかないかに尽きます。

コロナ禍で、不動産業界はDX化が進んだ。業界は進化した。禍転じて福をなす、です。
しかしDXが進んでも業界人の意識が変わらなければ何も変わりません。DXはあくまで業務遂行の手段でしかありません。コロナ禍がようやく落ち着いてきた今、ウクライナ紛争が起きています。戦場だけではなく、ウクライナからの難民や経済制裁の是非について様々な場所で倫理観が問われています。不動産業界はいまだ倫理観が十分に働いている業界とは言えません
これは日々の業務について考え直す良い機会ではないかと思います。コロナ禍同様こちらも「禍転じて福をなす」としたいと思います。

最後までお読みいただきまして、ありがとうございます。

犠牲になられたウクライナの人々のご冥福と、被害にあっている人々に心からお悔やみとお見舞いを申し上げます。1日も早い平和と日常の日々が戻ることを切に願っております。

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