6月末、大阪市西成区で住宅が突然崩落する事件が発生しました。
家屋が擁壁の下に崩れ落ちる瞬間の映像を見て驚いた方も多くいら
っしゃると思います。
しかし驚きはそれだけではなく、
都心のど真ん中で起きたということ。
山間部の集落やニュータウンならこのような災害が起きることも考
えられますが、
果たして都心でそのようなことがあるのでしょうか?
場所を聞いて、しばし耳を疑いました。
大阪市内の市街地にあのような場所があるとは「ブラタモリ」
好きな「地形マニア」の方なら別ですが、
普通は知らないでしょう。大方地元、
もしくは地縁のある人が知るところです。ちなみに、この場所を地形好きの方がなぜ知っているのか?
それは、そこが上町台地の端として有名な場所だったからです。
大阪の天王寺区や中央区にもその場に立つだけで上町台地を感じる
ことができる急坂はありますが、
今回の災害現場のような急峻な場所は少なく、
それだけ特殊な場所だったということです。
そこに巨大な擁壁があり、その上には住宅があり、
直下では老人ホームの建築工事が進められていました。
報道によれば地域住民からは「
地盤が緩い場所なので対策を講じて欲しい」
という不安の声も上がっていたといいます。
因果関係は明らかにはされていませんが、この崩落事故、
起こるべくして起きたという向きもあるでしょう。そして西成の話題をニュースで見かけなくなった頃に起きたのが熱
海市の土石流。
西成の住宅崩落は幸いなことに怪我人等はいらっしゃいませんでし
たが、熱海の土石流では大変残念なことに7名の方が犠牲となり、
いまだ27名の行方不明者がいらっしゃいます(*)。
民家のすぐ横を住宅を飲み込みながら大量の土砂が流れ落ちていく
様子に驚きを隠せませんでした。
こちらについて筆者は現地の様子は全くわかりませんが、ネットやテレビで見る報道や画像を見ると、どうやら土石流の端緒部は開発行為に伴う大量な盛り土があったようです。
事故現場の過去撮影された現地上空からの写真を見比べると、以前は森林であった部分が近年になってから盛り土が施されていたことがよくわかります。
また土木のことを多少知る人であれば、画像を見れば「排水処理がなされてないのではないか?」という疑問が浮かぶでしょう。こちらも西成の件と同様に今後の調査結果に判断を委ねることになりますが「人災」の可能性もあり得ます。
梅雨時期に東西日本で起きた二つの事件は、土や水の怖さを知るに十分過ぎる出来事であり、特に熱海の件は「土地の安全性の大切さ」を知らしめるにはあまりに大きな代償を伴ったと言えます。
人が安心して安全に暮らしていくために必要な住宅というインフラ。
住宅が建設される、さらに重要なインフラと言える「土地」。
この安全性についてどのように考えるのが良いでしょうか?
続きは後編でお話しさせていただきます。
* 原稿執筆現在(2021年7月7日)
大阪市西成区崩落事故の住民の方々、熱海土石流災害で被災された方々に
衷心よりお見舞い申し上げます。