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〔コラム〕〜心理的瑕疵の考え方~不動産と人の死【後編】

国土交通省が「心理的瑕疵ガイドライン(案)」の意見募集、いわゆるパブコメを募集しています。
一般的には「事故物件」などと呼ばれたりもする心理的瑕疵物件、多くの方ができれば避けたいと考えています。中には気にしない方もいらっしゃると思いますが、それも心理的瑕疵の程度によります。まったく気にしないレベルから、気にはなるけど安くなるなら買う(借りる)というレベルまで、その人の感じ方による部分が大きい。感覚的であるがゆえに仲介業の現場でも取り扱いにくい部分がありました。
お住まいだった方が老衰等で自然死した場合でも告知する業者もあれば、居住者が変死した物件でも「誰かが一度済めば告知は必要ない」として関係者に短期間住まわせてから告知せずに賃貸募集するような業者もあります。

そんなあいまいな心理的瑕疵についてガイドラインができることは業界にとってはプラスであると考えます。
しかし、心理的瑕疵は定量的に定義できるものではありません。
例えば同様の殺人事件が起きた場合であっても東京の都心部と離島の山村などでは捉えられ方が異なるということは前編でも触れたとおりです。

とはいえガイドラインができてしまえば良くも悪くもそれに従わなければなりません。
問題はガイドラインの存在しない、今現在の話。

具体的には以下のような対応が考えられます。

・売主(貸主)への確認
まずはこれが基本。あたりまえと思われるかもしれませんが、きちんと聞いていない場合もあるでしょう。「こちらの物件で、心理的瑕疵にあたるようなことはありましたか?」と聞いても心理的瑕疵とは何であるかを売主(貸主)が理解しているとは限りません。

今回のガイドラインでは人の死の場合のみを取り上げていますが、暴力団員が住んでいた、死には至らなかったが重大な事件が発生したなど、人が亡くなっていなくても心理的瑕疵にあたることはあります。
「住むに当たって心理的な抵抗を感じることがありましたか?」と聞き、さらにはこのようなことが心理的瑕疵にあたると例示的に示すことも必要です。・周辺住民への確認
当事者以外にも周辺の人に聞くことも大切です。
当事者が嘘をつくことはあまりないと思いますがあり得ない話でありません。
また、前所有者から知らされておらず真実を知らないことも十分にあり得ます。実際に筆者も、戸建て業者が相続案件を取得し、隣地との境界確認の際に隣地住人から敷地内で自死があったことを初めて聞かされた、という事例を知っています。唐突には聞きにくいかもしれませんが、もし告知していない購入者に「隣の人に聞いて心理的瑕疵を知った」と言われ、それが事実であった場合、仲介業者は十分な調査を怠ったと判断され損害賠償を請求される可能性もあります。

・ネットでの調査
「大島てる」を見る。これは見ておいたほうが良いでしょう。同サイトについては信ぴょう性がないという見方もありますが、正しい情報も多くあり、十分参考になります。
それ以外にも住所やマンション名プラス「事故」「事件」といったキーワードで検索する、マンションであれば掲示板を見る、といったこともしておきましょう。
特に掲示板については心理的瑕疵に限らず、マンションに関する「噂話」を知ることができます。「ネットに記載されている内容だから意味がない」、という向きもありますが決してそんなことはありません。なぜなら検討者もネットで調べている可能性が高いから。

確かにネット記事には眉唾な情報も多いですが、掲載されている以上は質問される可能性があります。そして、答えるためには調査する必要があります。

心理的瑕疵は買う(借りる)人にとっても、取り扱うエージェントにとっても難しい問題です。ガイドラインができるのは進歩だと言えます。
ただ売買の場合は知り得たことをいう必要があるのに対し、賃貸では3年を区切りとしてそれ以前のことは告知不要といった線引きは、それが良いのかどうか判断が分かれるでしょう。賃貸物件のオーナーからすれば「たった一度の事故」で資産価値が低下するのはやりきれないでしょうし、住む側からすれば購入なら真実を話してもらえるのに賃貸ならば告げてもらえないというのも納得がいかないでしょう。

一度人が亡くなった不動産を事故物件として取り扱えばいずれ日本中は事故物件だらけになります。それが物件の流通を妨げ、不動産の価値を下げるのは、国の資産価値を既存する話です。そもそも人が死ぬのは自然なこと。資産価値を毀損するのは「自然な死」ではないものとはっきり決める必要があります。

ガイドラインの作成も大切ですが、必要なのは不動産に対する考え方ではないでしょうか。いくらガイドラインが作成されても、その通りに告知するかしないかは人に委ねられています。

最後までお読みいただきまして、ありがとうございます。

 

*本コラムは、RE/MAX JAPAN のメルマガで配信した内容を基に掲載しております。
本文中に出てくるデータは配信当時に当社独自の調査に基づいたものです。

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