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〔コラム〕〜心理的瑕疵の考え方~不動産と人の死【前編】

「心理的瑕疵の取り扱いに関するガイドラインができました」。というニュースを見た方も多いでしょう。
心理的瑕疵のガイドライン=事故物件の基準と読み替えるとわかりやすい。
心理的瑕疵は、不動産の瑕疵の中でも一番曖昧でわかりにくい。売主、買主が気になるのはもちろん、その両社の中に入るエージェントにとってもどこまでが心理的瑕疵になるのかその判断に迷うところです。

ところで改めて「瑕疵」とは何でしょう。
辞書的に瑕疵とはキズのこと。不動産の瑕疵とは「不動産のキズ」です。法律用語としては「本来あるべき品質や状態が備わっていないこと」。その「不動産の瑕疵」、大きく四つに分けることができます。

(物理的瑕疵)
これが一番わかりやすい。雨漏りがする、シロアリに喰われている、耐震基準を満たしていないといった建物の欠陥を指す場合も多いですが、土壌汚染や地中障害等、土地に関する瑕疵もあります。

(法律的瑕疵)
法令等で自由な使用収益が阻害されている場合がこれにあたります。建築制限や既存不適格、接道要件を満たさない再建築不可物件等々。

(環境的瑕疵)
周辺環境に問題がある場合です。工場の臭気、鉄道の振動、道路の騒音等々がこれにあたります。

そして残る最後の瑕疵が心理的瑕疵
建物内、敷地内における自殺、殺人などが発生した場合がこれにあたります。エージェント業務においてこの心理的瑕疵が厄介な理由は二つあります。

一つは調査がしにくいこと。
先にあげた三つの瑕疵は現地調査、役所調査、周辺調査でおよそ発見することができます。
建物の物理的瑕疵は建物であれば建築士や工事業者に調査してもらうことで、土地の物理的瑕疵は地図や謄本を使っての地歴調査等で把握できます。
法律的瑕疵は土地家屋調査士や建築士等に依頼して役所調査を徹底すればわかります。
環境的瑕疵はエージェント自身が地図調査や現地周辺調査で発見することができます。
しかし心理的瑕疵は専門の士業がいるわけでもなく、ヒアリングするしかありません。極端な話、実際には何か問題があったとしても売主が「知らない」と言ってしまえばお手上げです。仮に売主が本当に知らない場合でも「事件性があるようなことがなかった」という証明にはなりません。実際に売主が前所有者から聞かされていないというような場合もあります。

もう一つは、金銭換算しにくいこと。
物理的瑕疵は、文字通り物理的に修復できることが多く、瑕疵が有る物件は修復にかかる費用分を売却価格から減じることができます。
法律的瑕疵も容積率が消化できなければその減価分を見積もることができます。
しかし心理的瑕疵については「殺人事件が起きたからこれだけ安くします」というような金銭換算が難しい。これは環境的瑕疵についても同じことが言えます。

また心理的瑕疵の場合、それが瑕疵にあたるかどうかも難しいところです。
例えば「その土地で殺人事件があった」。そんな土地を購入したいという人がいるでしょうか。できればそのような土地の購入は避けたいという人がほとんどでしょう。
しかしその重みは物件によって異なり「東京都内中心部に有る千戸超の大規模マンションの敷地内」と「山間部にポツンと有る一戸建て」とでは印象が全く違うでしょう。
さらにそれが先月起きた物件と10年前に起きた物件でも、受け止め方が変わります。実際に筆者も他殺体と思しき人骨が土地から出てきた物件を知っています。場所は京都市の壬生といわれるエリア。周辺をよく知る人曰く「このあたりは幕末の頃とても治安が悪かったので人骨が出てくるのは珍しくない」とのことでした。

筆者が遭遇した「他殺体」は新撰組の仕業らしいですが本当のことは知る由もありません。
しかし、考えてみれば人はいずれ必ず死んでしまいます。病院以外で死ぬことも多くあります。身の周りにある土地や建物で今まで多くの人が亡くなっています。自然死、病死、自殺、他殺。それぞれ人に与える心証もが違います。忘れられるまでの時間も違います。そんな取り扱いが難しい心理的瑕疵。実務の場面でどのように考えれば良いでしょうか?

続きは後編でお話させていただきます。

最後までお読みいただきまして、ありがとうございます。

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