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〔コラム〕リスク管理とマイホーム選び

新型コロナウイルスが猛威を振るっています。この原稿を書いている時点でも、コンサートやイベントの中止が相次ぎ、全国の小中学校に臨時休校が要請されるなど日本経済に大きな打撃を与えています。

また世界的にみても、南極大陸を除く世界5大陸で発症が見られ、ニューヨーク株式市場が暴落するなど、その影響が広がっています。そんな新型コロナウイルスですが、パンデミックやパンデミック防止対策により引き起こされる経済危機に不安を覚える人が多い一方、感染症そのものはそれほど怖がる必要はないという意見もあります。

過度に恐れる必要がないという人の根拠は、「確率論で考えれば交通事故の方が命の危険がある」「インフルエンザの方がより多くの死者が出ている」といった比較論から、「死亡者は特定疾患を持つ人及び高齢者に限られている」といった感染症のリスクを考えてのものまで、様々です。それらの妥当性については、専門的知識を持ち合わせているわけではなく本メルマガの趣旨とも違うので掘り下げることはしませんが、少なくともある時点において、妥当性のある意見であったように思います。(本メルマガ配信時点ではどのような扱いとなっているかはわかりませんが……)

多くの方にとっては身の回りに感染者がいないにも関わらず、日本中が新型ウイルスの話題で持ちきりとなり、外出を控える人が増え観光地は閑古鳥、マスクは売り切れ高額で転売される始末。なぜこのようなことになったのでしょうか?様々なことが絡み合っての結果でしょうが、一つ理由を挙げるとするならばそれは「命に関わる恐怖」かつ「未知なるものへの恐怖」です。(この記事を書いた時点では)

新型コロナウイルスはそれほど多くの方が亡くなってはいません。一方、インフルエンザは年間3,000人以上、ピーク時には日本全体で一日数十人が亡くなっていますが過度に怖がる人はおらず、感染者数が多い年でも社会がパニック状態にはなりません。それは、インフルエンザのことをよく知っているからです。

かかればどうなるか身を以て知っている人が多いのはもちろん、インフルエンザにかかったことがない人であっても、身の回りでインフルエンザにかかった人がどのようになったか(多くは会社を数日間休む程度で済んでいるでしょう)を知っている。「知っている」から怖くない。それに対し新型コロナウイルスは、その正体が良くわからない。

よって、マスクによる予防効果は限定的と言われてもマスクを買い占め、武漢の場所もよくわからず(北京や上海等の沿岸部大都市からは遠く離れている)に全ての中国人を避けようとしたりします。正体がよくわからないものは、その対象をよく知ろうとせず「とりあえず避けておいたほうが無難」と行った行動になりがちです。確かによく知らないものを情報収集し考え判断し自ら責任持って行動するよりも避けたほうが無難で効率が良い。

東日本大震災の際の原発事故の風評被害なども同じといえます。人は、既知の事象に対するリスクには寛容で、知らないものに対するリスクには過敏になります。少し前置きが長くなりましたが、不動産の取引においても同じようなことがあります。

わからないリスクは避けようとします。さて、どのようなものがあるでしょうか?

続きは後編でお話しさせていただきます。

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新型コロナウイルスが社会に大きな影響を与えています。
抑制対策で学校が休校になり、大きなイベント類は中止。大企業を中心に自宅待機者が増え、マスクやトイレットペーパーなどの買い占めをされる一方、観光地や繁華街を中心に外出する人は激減しています。
少なくとも、この原稿を書いている時点ではそれほど多くの死者が出ておらず、被害規模だけで言えば毎年のインフルエンザの方が桁外れに大きな被害が出ているにも関わらず、このような状況です。

筆者は伝染病については門外漢であり、あくまで個人的な感想としてご容赦願いたいのですが、今回の事態から学び取れるのは「人はよくわからないリスクは避けたがる」ということです。
これは不動産取引にとっても当てはまります。

不動産には多かれ少なかれメリットとデメリットが共存しています。
特に一定の予算で物件を探す場合は、デメリットのない物件などはなく、メリットデメリットはトレードオフとなります。
駅に近いけれど面積が狭い、築年数は新しいが駅から遠い、といった具合です。

ここで例に挙げた「面積が狭い」「駅から遠い」等は、どのような不利益があるかがわかりやすく「多少不便ではあるがメリットもあるので購入しよう」といった決断がしやすい。金額換算しやすいといっても良い。
10平米狭いが500万円安い、駅から5分遠いが300万円安い、などと考えることができす。

これに比べて耐震性能や水害の危険、活断層の存在などはどのような不利益がどの程度あるのかがわかりづらい。
いずれも数値で表したり地図上で図示することは可能ですが、自分にどのような不利益があるのかがわかりづらい。
どの程度の地震でどうなるのか?どの程度の雨や台風が来たら災害に遭うのか?その時に被る被害はどのようなものなのか?がわからない。ただ確実に言えることは最悪の場合、居住者の命が奪われる可能性がある、ということです。

この「命が奪われる可能性がある」という点は、「面積が狭い」「駅から遠い」といったデメリットとは大きな違いがあります。
たとえそれが可能性としては相当に低いものであっても、命に関わる且つ情報が少なくよくわからないリスクなら避けたほうが無難、となるわけです。命を脅かすようなことが起きる確率は、活断層の上に建つマンションや豪雨時に浸水の恐れがある一戸建てよりも、前面道路の交通量が多いマンションや消防活動が行いにくい路地奥の住宅のほうが高いと思いますが、多くの人は活断層上や浸水エリアの物件を避けます。
これはインフルエンザよりも新型コロナウイルスを恐れる心理に似ています。

不動産、とりわけマイホームは金額的に大きな買い物で有るだけではなく、生活のベースとなるもので有り、そこには絶対的な安全・安心が求められます。
「面積が狭い」「駅から遠い」等の不自由は我慢ができても命に関わるようなリスク、特によくわからないリスクは完全に避けたいと思うのが人情です。そのようなリスクを過度に嫌悪する人に「活断層より交通事故の方が怖いですよ」といってもあまり意味はありません。そこは理屈ではないからです。

エージェントとして取るべき行動は、まずはお客様の気持ちに寄り添うこと。
たとえ発生する確率が低くとも、お客様がそのリスクに嫌悪や恐怖を感じるのならばその物件は見送った方が良いでしょう。
一方、正しくリスク開示をした上で、お客様が「他の人が敬遠するためお買い得」と感じるならばオススメするのが良いでしょう。

エージェントにとって大切なのは、経済的に正しい選択肢ではなく、お客様にとって正しい選択肢を選んでもらうこと。
より安くより機能的な衣服や、栄養が行き届いて安価な食事だけ選ばないのと同じであり、マイホームも理屈だけで選ぶわけではありません。

最後までお読みいただきまして、ありがとうございます。

*本コラムは、RE/MAX JAPAN のメルマガで配信した内容を基に掲載しております。
本文中に出てくるデータは配信当時に当社独自の調査に基づいたものです。
 
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