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自然災害リスクと不動産

昨年は、関西は多くの災害に見舞われました。
大阪府茨木市・高槻市界隈を震源とした地震に始まり、鴨川流域の京都市中心部にも避難指示が出された豪雨、猛暑の中エアコンを節制し亡くなった高齢者もいらっしゃいました。
そして一時は関西国際空港とのアクセスができなくなるなど南大阪を中心に大きな爪痕を残した大型台風。

筆者が関西在住であり幾分エリア的に偏った事例をあげてはいますが、昨年は全国的に見ても多くの災害が起きました。
「平成時代の最後の年」は決して「平静」とはいえない状況でした。

1日にして建物が傾き、水浸しになり、あるいは倒壊・損壊する。自然災害は不動産という資産にとっては大変な脅威です。大災害に見舞われずとも、「小さな災害」でも修復には手間やコストがかかり、所有者には頭が痛い話です。
また、不動産は読んで字のごとく動かすことができない。
「このあたりは災害の可能性が高いから別の場所に移ろう」といったことはできず、売却して買い換えるしかありません。
不動産は動きませんが、皮肉なことに人は動きます。そう、投資用不動産であれば、移動してしまうのは賃借人です。オーナーにとっては、泣きっ面に蜂となります。

そこで不動産を買うときには、どのような自然災害のリスクがあるかを考えることが必要となり、エージェントにも自然災害リスクに対する知識が必要となります。

しかし現在の重要事項説明の項目は、それらのリスクに対する説明が網羅されているとは言い難い内容です。
記載されるのは主だったところで「造成宅地防災区域内の宅地か否かの説明」「土砂災害警戒区域内の宅地か否かの説明」「津波災害警戒区域内の宅地か否かの説明」等の「各種法令で指定された区域内にあるかどうか」の説明をすることのみ。
砂防法、河川法、森林法等にいたっては、不動産事業者であっても「実務的には関わったことがない」という人も多いでしょう。
そういったことから、これらの各種法令については「区域内か否か」の告知が義務であり、実際にどのような被害があったかやどの程度被害が起きそうなのかは説明義務がありません。

正確には、「●年前に床下浸水があった」というような具体的な被害があり、そのことを売主から聞いていた場合には、エージェントは買主に伝える必要があります。
しかしこれは「災害リスクの開示」ではなく、「以前この部屋で自殺があった」などと同様「知り得た事」としての「告知義務」です。

いくつかの法令を挙げたましたが自然災害は他にもあります。
地震による被害では「活断層の有無」「液状化の可能性」「津波の危険性」などが挙げられます。台風や梅雨時の大雨では「堤防決壊による浸水」、夏のゲリラ豪雨による都市部の冠水……。
「そういったものを全部調べることなんて不可能!」という声も聞こえてきそうです。
確かに、これらすべてを詳細に調べるのは骨が折れます。お客様によっては全く気にしない方もいらっしゃいます。
さて、実務的にはどう考えればいいでしょうか?

続きは後編でお話しさせていただきます。

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昨年は災害の多い年でした。猛暑、台風、大雨、地震等々。
ちなみに2018年の「今年の漢字」は「災」でした。

不動産購入時、多くの人は「地震の時に建物は大丈夫だろうか?」「台風で川は決壊しないだろうか?」「津波が起きたら浸水しないだろうか?」等、様々な自然災害リスクに対して不安を感じます。ましてここ最近の自然災害の多さ。気になる人が多いのもうなづけます。

しかし、不動産購入時に受ける重要事項説明はそれらをすべてを網羅しているわけではありません。考えうるすべての自然災害リスクを説明されても、それはそれでションボリとしてしまうかもしれなませんが、知らない・わからないというのもまた不安。

その辺り、実務上はどのようにバランスを取っていくのがいいのでしょう?

1、ハザードマップは開示する
まずは、重要事項説明書への記載の有無は別として、ハザードマップはお客様に開示するべきです。ハザードマップには主に、洪水・津波・土砂災害発生時に想定される被害が記載されています。

エリアによってはお客様に開示したくない場合もあるかもしれませんが、ハザードマップを見れば明らかに災害時の被害が大きいエリア、例えば周囲のエリアのほとんどが「洪水によって想定される浸水深0.5m未満」であるのに対し当該地が「5~10m」である場合などは、たとえ過去に浸水被害がなかったにしても信義にもとります。

また、ハザードマップ以外にも活断層マップや液状化マップなども公開されています。

実際に災害が発生した時の避難場所・経路等が記載された防災マップも合わせて紹介するようにしたいものです。

2、不動産価格の妥当性を説明する
リスク開示すると「そんなリスクのある不動産ならば、この金額は高いのではないか?」と思うお客様もいるでしょう。が、そうではありません。「リスクがあるから、その価格」なのです。

ハザードマップはWEBサイトや市役所等で簡単に見ることができるオープンな情報です。
よって、不動産価格はそのようなリスクも反映された金額と考える方が妥当です。
郊外の取引の少ないエリアならともかく、たくさんの不動産が取引されている都市部において、すべての買主が災害リスクを知らされずに不動産を購入しているとは考えにくく、どのような不動産も活断層の存在や堤防の決壊リスクを織り込んだ価格となっています。
「このようなリスクがあるのに、この価格(は高い)」ではなく「このようなリスクも含んでこの価格」なのです。

3、どうしても避けたいリスクかを共有する
すべての災害リスクが完全に排除された不動産はありません。地震、津波、洪水、土砂崩れ、誰だって災害は怖いし遭いたくありませんが、「どの災害も全く影響がない」という不動産は稀です。

高台にあり津波の危険性がなくても土砂崩れがあるかもしれません。

平地にあっても排水の処理能力が低くてゲリラ豪雨による浸水被害を受けるエリアもあります。

少し乱暴な言い方ではありますが、「災害に対して100点」という不動産はありません。

これは住宅を選ぶ際に「100点の住宅はない」というのと同じ。住宅選びで迷わないためには、駅近、広さ等、いちばん譲れないポイントを決めるのが良いですが、自然災害リスクに関しても同じことが言えます。

「これだけは避けたい」という部分を決めれば、案外と気が楽になります。

地震の被害にあった経験のある人で地震に対して恐怖心がある人は活断層に近い物件は避けるべき。

津波や洪水も然り。中には「地震や洪水なんてそうそう起きやしない」と考える人もいるでしょう(実際、そうであるともいえます)。

そういう場合は、大災害よりもゲリラ豪雨による道路冠水等、頻繁に起きそうな災害を避ける方が合理的です。


リスクマネジメントで大切なのは、どのようなリスクがあるかを把握すること、そして事前に対策を講じて発生時の損失を抑えること。これは自然災害とて同じ話。

エージェントとしては、リスクを開示するしないと言ったレベルの低い話ではなく、リスクにきちんと向き合いお客さまと一緒に「リスクマネジメント」をするくらいの気概で不動産に取り組み、お客様の信頼を勝ち取って欲しいものです。

 
最後までお読みいただきまして、ありがとうございます。