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〔コラム〕平成の不動産業界を振り返る

「平成が終わる。」
この原稿を書いている時点では新しい元号はわかっていませんが、メルマガが皆さんの手元に届く頃には新元号となっています。
今月は、不動産業界目線で約30年間の平成を振り返りたいと思います。

平成はヘイセイであり平静と同じ音。
しかし、その穏やかな語感とは裏腹に、世の中の動きはその波乱万丈な30余年でありました。

平成の始まりは、不動産業界に従事していない方でもそのイメージは「バブル」でしょう。
昭和60年代から平成元年にかけて不動産価格は急騰。新築マンションは抽選で購入もままならず、引き渡し前に転売したり中古の方が高かったりと大変景気が良い時代です。
それなら数年前までのタワーマンションの売れ行きと変わらないのですが、当時と今で大きく違うのは「郊外不動産の価格」と「宅地・一戸建の価格」も高騰したことです。
都心部の不動産が高騰しているのはリーマン前も今も同じですが、バブル当時は都心部はもちろん、郊外のバス便ニュータウンなどの価格も都心では高くて買えないため購入希望者が殺到して高騰。
今では考えられませんが、大阪市内勤務者の「マイホームエリア」は、北は滋賀県の野洲・守山、西は兵庫県加古川市、南は和歌山県岩出町、東は三重県名張市まで伸びました。

バブル崩壊は平成3年(1991年)に訪れました。
崩壊に至る経緯等については書籍等で色々調べることができますが、そのキッカケが平成2年(1990年)から平成3年(1991年)にかけて行われた総量規制であることはほぼ間違いありません。
総量規制とは、簡単に言いますと当時の大蔵省によって行われた土地関連融資の抑制。不動産融資の伸び率を総貸出額の伸び率以下に抑えるという通達が出され、景気は一気に収縮。
その後は「失われた20年」となりました。

バブル景気とバブルの崩壊で波乱の幕開けとなった平成ですが、その後未曾有の災害が起きました。
平成7年(1995年)の阪神淡路大震災です。

それまで、関西人の多くは「地震は関東のもの」「関西では地震は起きない」と思っていました。実際に、当時大阪で揺れを感じた方の多くは「自分の場所が震源地」と思っていました。
テレビで映し出される映像も、地震が起きた直後は「被害を受けた新大阪駅」等が映し出されるばかりで、甚大な被害を被った神戸の報道がなかったことを今でも覚えています。

不動産売買契約には危険負担についての取り決めがあります。
「本物件の全部又は一部が、天災地変その他当事者の責めに帰さない事由により、滅失又は毀損した時は~」というモノです。
契約書の読み合わせでは「あるはずのない事」として読み流す方も多い条項ですが、大変不幸な事に、阪神淡路大震災の時には記載事項が現実のものとなってしまいました。

阪神間を中心に多くの木造住宅や集合住宅が破損し、その程度によって「一部損壊」「半壊」「全壊」と区分され罹災証明が発行されました。
この被害を受け、平成12年(2000年)には建築基準法が改正。
木造住宅の耐震基準をより厳しく、具体的には「地耐力に応じて(布基礎、ベタ基礎等)基礎を特定」「構造材の場所に応じて継手等の仕様を特定」「耐力壁の配置にバランス計算の必要」と取り決めました。
また、平成14年(2002年)には被災後のマンションの建て替えに関する法律「マンションの建て替えの円滑化等に関する法律」が制定されました。

阪神淡路大震災のような天災が建築基準法改正のキッカケとなることは過去にもありました。例えば、昭和56年(1981年)の改正、いわゆる旧耐震から新耐震への改正のキッカケは昭和53年(1978年)の宮城県沖地震です。
ところが、天災ではなく「人災」として建築基準法改正のキッカケとなる事件が起きました。
平成17年(2005年)に発覚した耐震偽装問題です。

耐震偽装問題とは、一級建築士が構造計算ソフトの計算結果を改竄して構造計算書を偽装、それを行政や指定確認検査機関が見抜けずに建物の建築確認をおろしてしまった一連の事件を指し、いくつかのマンションは耐震強度不足で建て替えを余儀なくされました。
この問題を受けて建築基準法は平成19年(2007年)に改正、建築確認や工事検査の運用が厳格化され、これにより建築確認取得までの期間がそれまでの3週間程度から数ヶ月に遅延。建築業界が不況に陥るキッカケとなりました。
しかしこのあと、さらなる不況への引き金となる事件が起きます。

続きは後編でお話しさせていただきます。

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前回に続き不動産業界目線で平成を振り返る。耐震偽装問題から。。

耐震偽装問題で不動産業界が揺れたのは平成17年(2005年)。

当初は「アネハ事件」として、あたかも姉歯という一級建築士による個人的な犯罪として見られていましたが、その後組織的な関与が疑われたり別の事業者による事件が発覚するなど、

業界全体の構造的な問題として捉えられるようになりました。

結果として平成19年(2007年)に建築基準法が改正され、業界は不況に襲われました。

が、これはその後に業界に襲いかかるバブル崩壊時以上ともいえる事件からみれば序章のようなものでした。

「リーマンショック」です。

平成20年(2008年)に起きたリーマンショックと呼ばれる金融恐慌は、その前年に

アメリカで起きたサブプライム住宅ローン危機からの一連の出来事。

しかし、国内不動産市場への影響が大きかったのはサブプライムではなくリーマンでした。

レイコフ、スルガコーポレーション、ゼファー、創建ホームズ、新井組とアーバンコーポレーション……。

上場する不動産会社やゼネコンが次々に倒産、不動産業界に身を多く者としては将来どうなるのか見えない極度な不安感に襲われたのを覚えています。

ちなみに平成の間で最も上場企業の倒産件数が多かったのが平成20年(2008年)で33件。翌年平成21年(2009年)と合わせて2年で53件が倒産。

これは平成元年(1989年)から平成10年(1998年)の10年間の件数(44件)をはるかに上回ります。(注:倒産件数は平成30年12月31日迄の数字)

なんだか暗い話が続きますが、現実にこの時期の不動産業界は暗い時期で、徐々に相場は持ち直していきましたが、リーマンショックから3年、ようやくその影響が薄らぎ回復の兆しが見え始めた平成23年(2011年)に東日本大震災が起きます。

津波の被災地はもちろん、首都圏でも湾岸部を中心に液状化等の被害に見舞われ、日本中が、リーマンショックとは比較にならない程の暗澹たる空気に包まれます。

しかし、結果として東日本大震災直後が不動産景気の折り返しとなりました。

被災した住宅や社会インフラ等の復興特需はもちろん、原発事故からの反動による太陽光発電ブーム、そしてオリンピックに向けての建設ラッシュが重なり、建築業界の景気が先立って回復。住宅不足をきっかけとした賃貸住宅の空室率の低下などから不動産業界も、結果として、回復へと向かっていきました。

「結果として」と書きましたが、当時はほとんどの方が「ここが不動産の底だ」などとは思っておらず、当時は建築費の高騰によりむしろ不動産市況は悪くなると考えられていました。

その後、「タワマン節税」などが流行り言葉となり都心部のタワーマンションが売れに売れ、アパート建設が大ブームとなりハウスメーカー等が収益を伸ばし、平成27年(2015年)の外国人観光客激増を引き金とした民泊ブームから宿泊施設絡みの不動産取引が激増。

バブル以降はパッとしない時期の長かった不動産市況が久々に活気を戻したと思っていたところ平成29年(2017年)の末に「2019年4月に天皇退位」、平成が終わるというニュースが流れました。

ざくっと、思いつく限りで「平成不動産業界の流れ」を書きましたが、読み返すと色々と書き漏れも発見。

昭和の時代にはなく事業用不動産の価格高騰の後押しとなった不動産証券化、

またRE/MAXを日本に持ち込んだRE/MAX JAPANの元CEO_である故池添吉則氏が先駆者となった定期借地権と不動産オークションも平成時代に生まれた仕組みです。

何度も目にして辟易としている方もいるかもしれませんが、今回は「平成最後のメルマガ」。

2回にわたって平成の不動産業界を振り返りましたがいかがでしたでしょうか?

全く「ヘイセイ」ではなかった平成時代。本当に色々なことが起き、不動産業界を取り巻く状況は30年間で大きく変わりました。

では次の30年間はどんなことが起きるのでしょうか?

残念ながら、その答えは誰にもわかりません。しかしただ一つ確実に言えることがあります。

それは昨年のダボス会議でカナダ首相ジャスティン・トルドー氏が言った次の言葉です。

『今ほど変化のペースが速い時代は過去になかった。だが今後、今ほど変化が遅い時代も二度とこないだろう。』

なんとも言い得て妙。これからは変化が遅くなることはない。

変化に対して機動的に対応できるかどうかが成功の鍵。国家よりも企業、企業よりも個人が活躍できる時代といっても良い。

RE/MAXでは、次の30年も変らずに、活躍する個人を応援する仕組みを継続したいと思います。

 
最後までお読みいただきまして、ありがとうございます。

 

*本コラムは、RE/MAX JAPAN のメルマガで配信した内容を基に掲載しております。
本文中に出てくるデータは配信当時に当社独自の調査に基づいたものです。
 
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